第24章 新たな協力者
杏(あれは明らかに尾行をしているな。それも―、)
視線の先の相手は十代半ば程に見える少女だ。
男の体つきを見ればその少女の倍は生きているであろう事が分かる。
杏(…どういった理由があるのかは分からないが感心は出来ないな。)
杏寿郎は深い事情がある可能性も視野に入れつつ、眉を顰めながらその男に近付いた。
杏「少しお伺いしたい。」
男「今忙しいんだ!話し掛けないで…く、れ…。」
答えながら振り返った男は、十八とは思えない迫力のある杏寿郎の瞳にたじろいだ。
杏「何故あの様な少女を尾行している。良からぬ理由ではないと信じたいところだが、見て見ぬ振りまでは出来ない。きちんと話してくれ。理由があるのなら悪いようにはしない。」
杏寿郎はなるべく圧力を掛けないように問うたが、すっかり萎縮してしまっていた男はバッと少女の方へ縋るような視線を向けた。
杏(…何故そちらへ、)
男「た、助けてくれ…!俺は悪くないと言ってくれ!!」
その声に少女ではなく二人の護衛が振り返った。
二人はハッとした顔になると耳打ちし合い、その内の一人が走り寄ってきた。
護「紛らわしい事をしてしまい申し訳ありません。ですが、この男は怪しい者ではないのです。どうぞお気になさらないで下さい。」
杏寿郎は護衛ともあろう者が、主人である少女の尾行者を見逃している事態が理解出来なかった。