第21章 右腕の代わり
―――
杏(いよいよだな。)
杏寿郎が見つめる先で西陽が消えた。
一気に寒々しい空気になると街を取り囲む森がざわめく。
勿論街外れとなれば雪が残っている。
杏(足を慣らしておいて良かった。)
そう思ったその時――、
杏「出たぞ!!街へ向かった!!!」
杏寿郎の声掛けに二人は反応出来なかった。
杏寿郎は一人で鬼の前に立ちはだかると、その体を刀で止める。
すると鬼は気配から杏寿郎が柱である事を察して目を見開いた。
バッと急いで距離を取った鬼は細身の女の姿だ。
鬼は杏寿郎を見ながら後退りをした。
無理もない、その鬼は下弦の十二鬼月から落とされた鬼だった。
中途半端に経験値があるのだ。
そして、自然と杏寿郎から離れてしまった二人の隊士に視線が移る。
鬼「……。」
杏「高橋少年!橋本!俺の後ろへ回れ!!」
杏寿郎は二人の元へ駆け、間一髪のところで鬼の一撃を刀で受け止めた。
透「……は…ぁ……、こいつ、十二鬼月だ……。」
杏「違う!数字を剥奪されている!!怯むな!!」
透はまだ呆然としていたが、尻餅をついてしまっていた哲夫は慌てて立ち上がって刀を構えた。