第5章 薬草調達の任務
一方、杏寿郎を見送った菫は漸く頭巾を取って長い髪を解いた。
「……声を出さないのは結構疲れるものなのね…。」
そう独り言を言うと屋敷に戻って着物に着替える。
杏寿郎の屋敷の近くには珍しい薬草を取り揃えた店があった。
菫は前の担当場所であった蝶屋敷の主人であるしのぶに、定期的にそれらを調達してきて欲しいと頼まれていたのだ。
着替え終わると長い髪を再び束ねて道に出る。
勿論前髪はきちんと横に流しており、目が見えるようになっていた。
(炎柱様も任務に出ていらっしゃる。私もうんと働かなければ。えっと頼まれた薬草は…、)
蝶屋敷が担当だったとはいえ、患者の手当てをしていた訳では無い。
医療に関する知識のない菫は裏で薬の調合を行っており、代わりに薬草の知識を身に付けていた。
「御免下さい。」
目的地に辿り着いた菫はしのぶに教えられた通り、店の前ではなく隣の家の前で声を掛けた。
すると程なくして『はぁい。』と声がし、扉が開いた。
出て来たのは菫より幾つか年下に見える少女であった。