第21章 右腕の代わり
杏「なるほど!もう一人の隊士とはバラけて行動しているのだな!!高橋少年は鬼の姿や闘い方を見たのだろうか!」
透「は、はい…。多分異能の鬼です。何かしらの術を使っている…と、思います。」
透のハッキリしない答えを聞くと、杏寿郎は『ありがとう!』と気持ちの良い礼を言ってからもう一人の隊士を探しに行った。
杏「高橋少年と任務に当たっているのは君だろうか!!」
同じく街近辺を彷徨いていた隊士を見付けた。
彼は透よりも幾らか年上のようであった。
少なくとも少年ではない。
哲「え、ん柱様…、階級、庚の橋本 哲夫です。高橋と任務に当たっているのは自分で間違いありません。応援感謝致します。」
動揺してはいたが、しっかりとした受け答えだ。
杏寿郎は彼から話を聞くことにした。
杏「鬼についての情報が欲しい。知っている事全てを話してくれないか。」
―――
(寝ていて良い、だなんて…拷問に近いわ…。)
そう心の中でぼやく菫は "休む為だけの時間" を過ごしていた。
この時間は苦痛であったが、杏寿郎に命じられた事であった為に、毎日必ずどこかしらで時間を取って休むようにしていた。
(遠いってどちらまで行かれているのだろう。きっと濡れて帰ってこられるだろうから玄関にタオルを置いておこう。あとは…、)
菫は一瞬、体が温まるように生姜を沢山入れた豚汁を作っておこうかと思ったが、杏寿郎が温め直したら全てが炭になる気がしてやめた。
(でも…、遠いだけで良かった。勿論、難しい任務だとしても煉獄様が蝶屋敷へ治療にいらした事は殆ど無いから、滅多な事がない限り大丈夫だろうけど…。)
杏寿郎が厄介な任務であることを伏せていた為に、菫は呑気にそんな事を思ったのだった。