第21章 右腕の代わり
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杏「では、行ってくる!!」
そう菫に告げる杏寿郎の顔にはいつもの眩い笑顔が戻っていた。
「お気を付けて行ってらっしゃいませ。ご武運を。」
相変わらず代わり映えしない言葉を聞くと、杏寿郎は可笑しそうに眉尻を下げて笑った。
杏「うむ!必ず寝ていること!!」
そう言って地を蹴ろうとしたが、菫が返事をしなかった為に再び横を向いた。
杏「必ず寝ていること。」
口角を上げながらもう一度言うと、菫は苦しそうに『分かりました。』と返事をした。
杏寿郎はそれにまた笑ってから漸く出発したのだった。
杏(どんな隊士との任務なのだろうか。)
杏寿郎は少しだけ杉本と共にした任務を思い出したが、すぐにこれからの任務に意識を向けた。
要の案内に従って進むと、問題の街の手前で早速一人の少年隊士を見付けた。
杏「鬼殺隊の煉獄杏寿郎だ!情報の共有を頼む!!」
杏寿郎の堂々とした声に隊士はビクッと体を揺らす。
そして、『煉獄…、』と名を復唱し、杏寿郎の髪と瞳の色を見てハッとした。
透「階級、壬の高橋 透です!応援ありがとうございます、炎柱様!!」
その隊士、透が言うには、共に来た十人の隊士のうちニ人が殺され、六人が怪我を負って戦闘不能になり、そして自身ともう一人は少しでも情報を得ようと街近辺を調べて回っていたとのことだった。