第20章 触れる理由
照「お姉様、今いらした途端に笑顔でしたわ。珍しい…。良い事がありそうです!」
そう言われると菫は自身の頬をむにむにと揉んだ。
「私の表情は感情が乏しいとよく言われますが、そのような変化があるとは喜ばしい限りです。」
そう言って菫が無理に笑顔を作ろうとするので照子は慌てて止めさせた。
照「お姉様の作り笑いは…、その、あまり宜しくありませんわ。絶対にお気持ちを寄せる殿方の前でやってはなりません!」
「…………………。」
"気持ちを寄せる殿方" と聞いた菫は少し固まった後、『分かりました。』とだけ答えた。
照「お姉様はいつも必ずこれをお買いになられますね。あとこれも、これも!」
そう言いながら照子は傷薬を作る為の生薬を指差す。
「傷薬を作っているんですよ。主人がお体を張ったお仕事をしていらっしゃるのです。」
それを聞いた照子は目を輝かせた。
照「お姉様、ご結婚なされていたのですね!お体を張ったとお仕事とは、」
「間違えました、ご主人様です。伝えていませんでしたが、私は鬼狩り様のお世話をしております。」
その答えに照子は『なーんだ。』と不服そうに頬を膨らませる。
菫はそんな照子の頬を優しく突付いた。