第7章 両面宿儺に愛されたい
私は極平凡な女子高生で、幽霊やお化けなんて無縁の世界に住んでいた。
学校からの帰り道。
自転車を漕いでいると、制服の男の子を見かける。
私の住んでいる田舎には学校が3校しかない。
この辺の制服じゃない。
転校生とか?
親切心で声をかけたのが間違いだった。
「あの?もしかして迷ってます?この辺目印とかないんで」
「ああ?何だ?餓鬼か?」
話したのは彼ではなくて。
いや、彼なんだけど。
そうじゃなくて、彼の手には口があった。
その口が喋ったのだ。
「ひぁっ!」
びっくりして、私は自転車をひっくり返してしまう。
「ああ。悪い。この辺全然分かんなくってさ。グーグルマップとか通用しないね」
「…あの…その…手…」
私は恐る恐る、彼の手を指さす。
「ああ。ごめん。これ呪いでさ。たまに出てきちゃうんだ」
「…呪い?…」
悪意はなさそうな子だけど、怖いものは怖い。
私は数歩後ずさる。