第3章 パンダ【呪術廻戦】
タッタッタッと無駄に軽快な足取りで演習場の方へ向かう。そして階段側の木の影からこっそり顔を出し……っ!
「っ!」
「ん、あれ? 鵲さん?」
「く、釘崎野薔薇ちゃん……」
釘崎野薔薇ちゃん。以前に一度、自販機前で知り合って以来、なんとなく仲良し……な学生ちゃん。
「ぷ、なんでフルネームなの」
「い、や、ちょっとびっくりして……」
「鵲さん、こんなとこでどうしたの?」
「あ、えっと……」
パンダくんに会いに来ましたとか言えません。
「の、野薔薇ちゃんはどしたの?」
「ああ、私は今、伏黒と交代中。パンダ先輩、容赦ないんだよねー」
「そ、そうなんだ」
そう言えばさっき、野薔薇ちゃん投げられてた。
「で、鵲さんは、」
「のーばーらー」
「うぎゃっ」
コンっと軽い音がして、野薔薇ちゃんの頭に竹刀が落ちた。痛そう。
「ま、真希さん……痛い……」
「サボんな、おら、行くぞ」
「パンダ先輩ぶん投げるんですもん!」
「俺がなんだって」
「っ!」
「あ、パンダ先輩……」
ぬん、って。
ぬん、って出てこないでお願い心臓が出るかと思ったから。
「野薔薇、お前はパンダと近接練習続けてこい」
「真希さんはー?」
「私は恵と獲物の練習だ」
「はーい、行きますよー」
「えええー」
「あ、じゃ、じゃあ、みんな、頑張って、っあ」
パンダくんに肩組まれて連れていかれる野薔薇ちゃん。いつもの竹刀を担いで演習場へ戻る真希ちゃん。それぞれに軽く手を振って私も引き下がろうとした……はずだった。