第3章 パンダ【呪術廻戦】
「いっくぞおおお」
「うあああああ」
「おりゃああああ」
「たーかなーっ」
……めっちゃ近いやんけ。
「それでは、おふたりには……」
七海さんからの指示聞かなきゃいけないのにこんな近くにパンダくんがいるなんて無理すぎる。私にはハードルが高すぎる。タイミング悪すぎやしませんか。
パンダくんが実践演習してる声が聞こえる……。あの声が好きだ。
「それじゃあ、頼みますよ」
「あ、」
「はいっス」
なんてこった。七海さんからの指示ほとんど聞き漏らした。そして七海さんは扉の向こうへ……。
「ちょ、」
「あやめ、話なら聞いといたっスから、安心して欲しいっス」
「……明、ありがとうございます。頭が上がりません……。今度ご馳走させてください」
「五目あんかけ焼きそばで」
「だと思った」
「じゃ、いくっスか」
ほとんどの指示を右から左へ横流しした私は明についていくしかないわけで。好物の五目あんかけ焼きそばのこと考えてルンルンな明はスタスタ行ってしまうわけで。
何やってんだろ私。浮かれるにも程があるでしょ。尊敬する七海さん相手に……はあ。
パン、と両手で頬を叩く。切り替え切り替え。午後の仕事も頑張ろ。パンダくんの声聞けたし、元気出た、うん!
「あやめ、こっちっス」
「うん」
……うん?
ここ、高専の自販機前? こんなところでなんの仕事?
「てなわけで、あやめ、パンダくんに会ってきたら良いっスよ」
「はあ?!」
「せっかくここまできたんスから、行かなきゃ損っスよ」
「いや、でも、仕事……」
「チャチャっと会ってきたら良いんスよ。ほら、行った行った」
「ええ……」
「早く行かないと仕事終わらないんスよ、ほら! 早く! 行く!」
ドン、と背中を押されて校庭の方へ一歩踏み出した。
明を待たせるわけには行かないし、仕事はしなくちゃいけないし、でも確かに明の言うことも最も……だし……。
「ちょっと、眺めて、くる……」
「いってらっしゃいっス!」
小走りで、校庭の方に向かった。まだ、演習してるのかな。