第3章 パンダ【呪術廻戦】
「て、いう夢をよく見るんだよね」
「それはあやめのパンダくんへの愛が深いからっスかねえ」
愛車を丁寧に拭いている明に最近見る夢のことを話す。片手に紙パックのミルクティー。今は昼休憩。
休憩時間まで愛車に尽くす明は偉いなぁなんて思いながら側でスズズとミルクティーを吸う。空は高くて青い。良い天気だ。
「そんなに好きなら、もう直接会いに行って好きだって言ってきたらどうスか」
「っぶ」
「ちょ、汚いっスよ」
「っ、いや、今のは明がいけないでしょ?!」
「なんで」
「なんでって……」
明は良くも悪くもまっすぐ。素直。一直線。だからそんなことが簡単に言えるんだ。
私のパンダくんへの想いはそんな簡単な好きじゃない。恋愛的な好きじゃない、と思う。だってパンダくんは呪骸。私は当然ただの人間。そう、恋愛的な意味で好きなわけじゃない。
ただ、憧れているのだ。あのもっふもふの体に一度でいいから触れてみたい。いや、抱きついてみたい。ただの欲望。
「あ、そういえば午後は、高専呼ばれてるじゃないスか。ちょうど良いからパンダくん眺めてきたらどうスか」
「え」
「そんでそのままお願いしてみたら良いんスよ、抱きつかせてくださいって」
「ちょ」
「ほら、もう休憩終わるっスよー」
「あ、もう!」
愛車から離れて歩く明を追うしかなかった。
ねえ待って。これから高専でお仕事なんて私普通でいられる?
午後は体術の演習のはず……外に、いるよね。ああ、どうしよう、今日パンダくん眺められるかもしれないなんて嬉しすぎるんだけど。
今日の午後のスケジュールなんて忘れ去っていた過去の私を尻目に、明に続いて高専に向かって歩いた。