第3章 パンダ【呪術廻戦】
なんだかこう、もふっと、ぎゅうっと、したくなるんです。これはね、抗えないんです。欲求というものだから、抗えないんです。
「パ・ン・ダっくーーーーんっ!」
見かけた姿に心ときめかせ、胸を射抜かれ、ズキュンバキュンとやられにやられ、走って目的のひとに一目散。
ぎゅうっ
はあ、幸せ。幸せの極み。このもふもふ感がたまらない。好き。ずっとこうしてたい。お日様の匂い……あーーー幸せ。
「はっ」
目の前にはデカデカとしたパンダのぬいぐるみ。鳴り響く目覚ましの甲高い音。無駄にふかふかの布団。
ここは、私の、寝室ですね……。
つまり、そう、あれは……夢。
悲しいかな、ここのところこの夢ばかり見る。いや、嬉しいこともあるんだけど、私がもふっと抱きついていたのはパンダくんじゃなくてもふもふのパンダのぬいぐるみ。あのつぶらな瞳や低い声なんて聞こえない。だってUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみだもの。
うるさい目覚ましを止めて、布団を勢いよく剥ぐ。こうしないといつまでも布団の中にいてしまうから。
白いシャツに、パンツスーツ、髪は後ろで一つに束ねて、ナチュラルメイク。いつも通り。いつもの私。
私の仕事は、呪術高専での補助監督。同期は新田明。明は私の良き理解者であり、唯一の友人。
だってここ、変な人多いんです。私みたいな呪いが見えて、帷を降ろせる程度の一般人が仲良くできる人なんてごくごく少数なんです。もちろん、尊敬しているひとはいます。七海さんや、家入さんには、初期の頃からお世話になりっぱなし。伊地知さんには補助監督のイロハを教わりました。
でもお友達になんてなれるわけないじゃないですか。