第2章 高尾和成【黒バス】
帰宅して、風呂入って、飯食って。なんとなくスマホを見ながらベッドに転がって。気に入ってるゲームも、雑誌も、なんとなく今日はいいやって思って。こんなんならさっさと寝るか、なんて思っていた頃だった。
ピコン、と俺のスマホが鳴った。クラスの誰かだろうかなんて思いながら画面を見ると、あやめからだった。
『今、時間ある?』
速攻でフリックして返信。
『あるよ。なんかあった?』
ピコン。すぐに返ってきた。
『少し話せないかな? 通話できる……?』
なんでだろ。さっきまであんなに無気力だったのが嘘みたいに、勢いよく体を起こしてスマホに顔を近づける。文字を追って、戻して、追って。二度見した。
通話? あやめから? なんかあったのか?
俺からかけることはわりかし多いし、あらかじめ約束しておいての通話もするけど、あやめからの誘いなんて珍しいから驚いた。
もちろん、答えはYES一択な訳で、またも速攻でフリック。
『できる。いつでもかけてきて良いよ』
と、ついでにOKのスタンプ。あやめが好きって言ってたペンギンの。これはもう、お決まりのやつ。
すぐに既読マークがついて、数秒後、着信の画面に。一息だけ吸って、ワンコールで出る。
「もしもし、あやめ?」
『あ、もしもし、高尾くん。こんばんは』
「おう。どうしたの、こんな時間に? なんかあった?」
『ううん、ただ、ちょっと、お話したくて』
「話?」
『そう。高尾くんと、話したくて』
ふふ、と可愛らしく笑いながら話したい、なんて彼女に言われて、喜ばない男がいるなら会ってみたい。その頭ん中掻っ捌いて見てみたい。当たり前に嬉しいだろ。
「あやめから誘ってくれるなんて珍しいな」
『うん、そう、だよね。何かしてた? 忙しかったかな』
「そうじゃなくて。俺暇してたから気にしなくて良いし」
少し、低めの声で、様子を伺ってくるのが伝わって、慌てて大丈夫だと伝える。
あやめは、小動物みたいだ。何をしても、何を言っても可愛くて仕方がない。挙動が電話越しに伝わってくる。きっと今、ほんの少し不安がってる。
『あの、あのね、高尾くんっ』
電話越しに先程より大きなあやめの声。気合が入ったような声。何か伝えたいことがあるのだろうか。