第2章 高尾和成【黒バス】
タイミングが悪いだけなんだろう。けど、真ちゃんと仲良くしているあやめ。宮地先輩に笑顔を向けるあやめ。
そんな彼女に、勝手にイライラしてる。
自覚してる。これは嫉妬だ。ただの、醜い嫉妬だ。俺の、腹の深いところにある、どうしようもない独占欲が、じわりと湧き上がってきているだけだ。
普段は蓋をしているそいつらが、滲み出ているだけだ。きっと、時間が経てばおさまる。
今度こそ先輩らに一言挨拶して、部室を離れた。あやめと、真ちゃんと、俺の3人で。並んで歩くいつもの通学路。街灯が照らす薄暗い夜の道を、ひたすら歩く。合間の会話の内容は、ほとんど右から左だ。適当に相槌打って、そんで話を合わせて、会話して。普段通りの俺でいる。
だってカッコ悪いだろ、こんな嫉妬まみれの俺なんて。あやめに見せたくない。それだけだ。
「じゃあ、またね、高尾くん!」
「気をつけて、あやめ。また明日な」
「行くぞ、あやめ」
いつも通りに分かれる。笑顔で見上げてくるあやめの頭にぽん、と手を乗せて笑い返す。そんな俺を横目に、真ちゃんが彼女を急かす。いつも通りだ。いつも通り。
っし、これでこのまま帰って、明日にはこの黒々とした感情を沈めて、またあやめと会うんだ。
そう、思っていた。