第3章 ある時の八番隊
──伊勢七緒──
京楽隊長に確認してもらう書類を手に持ち、京楽隊長が居るであろう部屋へ向かう。
酒と女が好きで仕事はサボり気味。仕事中にいつの間にか居なくなっているのはよくある事。
急ぎ足で向かい障子を勢いよく開けると、酒片手にしていない京楽隊長と向かい合う十三番隊の氷室水月さんが居た。
「七緒ちゃん丁度良かった。水月ちゃんがお土産を持ってきてくれたから、お茶入れてきてくれる?」
氷室さんが持ってきたであろう箱を持ち上げながらそう言ってくる隊長。反対の氷室さんは「別にいらない」と京楽隊長に言う。
「七緒ちゃんも入れて三人分ね。これ隊長命令だから」
どうするべきが迷っていると京楽隊長の「隊長命令」で身体が動いてしまう。
京楽隊長の横に持ってきた書類を置き「用意してきます」と言うと給湯室へ向かう。
お湯を沸かしながら必要な物を用意する。
氷室水月さん。十三番隊の隊長補佐を務める方。京楽隊長と浮竹隊長と同期と初めて聞いたときは驚いた。私が入隊したときから時々見かける方だと思っていたが、まさか同期だったとは。私より少し小柄ながら実力はかなりのものと聞いている。
斬魄刀は打刀と脇差の二本所有していると聞くが一本は見たことがない。打刀は風に関連する能力らしいが正しくは知らない。
浮竹隊長に代わり虚討伐や現世での魂葬を行っているため、八番隊の隊舎で会うことは滅多にない。今回は京楽隊長へのお土産を届けるために来た様子。
同期の間柄故か、氷室さんと会っている時の京楽隊長はどことなく嬉しそうに見える。よく八番隊や他隊の女性を見る嫌らしい感じとはどこか違う。
お湯が沸いたので必要な物を持ちお二人が待っている部屋へ戻る。
先程と変わらない。氷室さんの横に白い物体がいること以外は。これが噂に聞く氷室さんの斬魄刀の一つ白狼が具象化した姿なのだろ。初めて見たが、可愛い。撫でてみたいと思ったのは心の内に留めておこう。
お茶を用意し、氷室さんが持ってきて下さったお土産の箱を開けると、中には鳥の雛を象られた可愛らしいお菓子が入っていた。お饅頭らしい。見たことないので現世のお菓子だと思われる。