第1章 事件1.新米刑事恋を知る
服は借りられてもさすがに下着は無理だ
飛田は男性で、未使用の下着を持っていたとしても女性用なんてあるはずがない
そう考えながら絞った下着を広げてパンッと皺を伸ばした時、カナはふと冷静にこの状況を考え直した
「飛田さんは男性で…ここは飛田さんの家で…私今すっぽんぽんで…」
次第にカァァっと顔が火照り、目の前がクルクルと回り始めた
生まれてこの方異性の家でシャワーを浴びたことなんてないカナは、初対面の男性の家でシャワーを浴びるという現実に気持ちが追いつかなくなっていた
「この状況…ダメだよね…」
警察学校も職場も男性の割合が多く、男性はビジネスパートナーという目でしか見ていなかったカナ
でもそれは仕事上のことであって、先程会ったばかりの飛田はきっと普通の公務員……困った時はお互い様と言っていたけれど、どんな思いで初対面の女性を家にあげ、浴室を貸してくれたのか…
初対面の男性の家に上がって、シャワーを借りて、軽い女だと思われてしまっていたらどうしよう…
「……っくしゅ!」
あれこれ考えていても埒が明かない
今はとにかく飛田が帰って来る前にシャワーを浴びて服を着なければと、カナは温かいシャワーを頭から被った
「はぁ…でも、あの時の飛田さんかっこよかったな…」
溜息をつきながら先程の救助で流木から自分を守ってくれた飛田を思い出し、このザワつく気持ちが何なのか疑問に思いながら身体を温めた
そして一方飛田はというと…
「(急がないと…!)」
近くのコンビニへと走り、入店するなり生活用品コーナーの棚の前で足を止めた
そしてカナと時を同じくして、下着問題に直面しているのだった
カナに上下の着替えを用意した所までは良いが、いざ自分自身が着替えた時に下着まで濡れてしまっていた事に気が付いた飛田
同じくカナも全身川に浸かっていたのだ、下着まで濡れているのは当然である…
シャワーを貸して着替えを出せば大丈夫と軽く考えていたが、本当に軽く考え過ぎていたと後悔した
女性をノーパンで帰す訳にもいかないし、家には男性用であっても新品などストックされていない
初対面の女性を家に上げ、シャワーを貸し、怪しい男と思われていないだろうか…
眉間に皺を寄せ立ち止まる飛田の後ろを何人もの客が通るのであった