第1章 事件1.新米刑事恋を知る
「高木君、男の人って何貰うと嬉しい?」
「ぶふぅー!?」
警視庁捜査一課強行犯捜査三係の昼休みのオフィスに、それはまぁ盛大に口の中の物をぶちまけた…いや、そうさせられた男性刑事が一人
その名を高木渉
「ちょっと汚い!ちゃんと食べないと食べ物が可哀想!」
自分が原因とも知らずとりあえずティッシュを箱ごと手渡す女性刑事もまた一人
その名を星宮カナ
2人は警察学校の同期で、階級は互いに巡査部長
三係への配属は高木の方がカナよりも時期が早かった為、部署内ではカナが一番下っ端の刑事である
この時間部署内にはこの2人しかおらず、他の刑事は外へ出ている様だった
昼休みと言ってもいつ通報がくるかわからない為合間を見ての昼食を取っていたが、カナの一言で高木の昼食はストップしてしまった
「ゲホゲホッ…急にそんなこと聞かれても!?」
「えー…だって高木君しか聞ける男の人いないし…」
「千葉だっているじゃないか」
「千葉君は三係の先輩だけど後輩だし…目暮警部はだいぶ年上だし…」
つまりカナが聞きたいのは、高木よりも何個か上の男性がプレゼントをされて喜ぶ物、らしい
おにぎりを頬張りながら「う~ん」と悩むカナを高木は机を拭きながらチラリと横目で見ると、これはどうやらラブの予感なのではと思うような顔をしていて二度見をしてしまう
「なになにぃ~?何の話で盛り上がってるわけお二人さん?」
「美和子さん!おかえりなさい!」
カナがガタッと席を立ち部署に戻ってきた佐藤美和子警部補を迎えると、佐藤はよしよしとカナの頭を撫でる
佐藤は仕事でもプライベートでも頼りにしている姉のような存在で、頭を撫でられたカナはとても嬉しそうに尻尾を振っている
「佐藤さん聞いてください!ついに"男を好きになるってよく分からない"と言っていた恋のこの字を知らない星宮に男の影ですよ!」
「ち、違う!そんなんじゃないのっ!」
「相手の名前は!?歳は!?どんな人なの!?」
「だから違うんです~!」
佐藤の勢いある攻めに背中を反らして否定をするが、佐藤と高木のニタニタ顔は止まらない
まぁ落ち着いて座りなさい、なんて佐藤に椅子を示され、三係内でこれから緊急取調べが行われるのであった