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ぎゅっ。

第32章 (私……私、とってない)



大雪が降ったり、合間に晴天になったり。

とにかく安定しないこの頃の天気 。


そんな中でも。マミは、拓眞との メールのやり取りをして。 気持ちを聞いてもらう事で。 すごく、心穏やかな気分で、毎日過ごせてるな。って。 「楽しいな」  って思ってた。

その日、デイサービスの送りのため、送迎バスにて お年寄り等の補助をしていたマミ。

 認知症を煩い、 昔の出来事はよく覚えているのに、 今この時の記憶を中々止めておくことの難しい、 利用者。お客様の、山際糸《やまぎわいと》さん。を 自宅に送り届けた時だった。


 玄関先で 、これから出かけるという、糸さんの 孫で、 高校三年生の 男の子と、かち合って……

『アンタ、〇✕□◇……っ!』


 マミの顔を見た途端、かなりな早口で 。マミに向かって怒鳴ってきた少年。

 マスクをしているためか 『アンタ』しか聞き取れなくて……

(すごく怒ってる?)  



とにかく。聞き取れなかったと、伝えるしかないと 。

逃げ出すなんてできなくて。  

マミが、 勇気を振り絞って 口を開こうとした瞬間。


「神咲、 あんた何してくれたの? 下駄箱の上に置いておいた財布あんたが取ったんでしょって、おっしゃってるよ。会社に……いえ、山際さんに迷惑……謝っても 許されない事してさ! ふざけんじゃないわよ!」  

同僚が 。一緒にデイサービスの送迎に回っていた、先輩の種橋《たねはし》が。  

マミの、 背後から。左耳に口元を近づけて叫んできた言葉は……  




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