第16章 8.守るために…

蝶屋敷の広い庭に出て、まずしのぶとカナヲが打ち合いの手本を見せる。
まだカナヲは呼吸が使えないので、シンプルな打ち合い稽古だ。
しのぶに一手いれられれば合格だ。
だがいくらしのぶが手を抜いていても、柱相手に一手をいれるなんて鬼殺隊士でも容易いことではない。
始まって5分程たつが、すでにカナヲは汗だくで息を切らし限界のようだ。


し「そろそろ交代しましょうか？絢蘭ちゃん今のを見ていれば大体わかると思いますが、私は一切攻撃や反撃をしません。これから10分間の間に1度だけでいいので、私に一手入れられるように頑張って下さい。10分もてば上出来。さてあなたの実力を見せて下さい。」


いつもみせているしのぶの笑顔が、ほんの少しだけ自然に笑っているように見えた。

絢蘭の頷きを合図に打ち込みの実力テストが始まった。
絢蘭は忘れないうちに先程の訓練の反省点を生かし、足に血液を循環させ一気にしのぶとの距離を縮めた。
そして一手を入れるために竹刀を振るう。
しかし流石は蟲柱。
速さや瞬発力そして柔軟性を鍛え上げているしのぶに、簡単に弾かれてしまう。


　『今けっこうなはやさで行ったんだけどなぁ。さすがねぇね！つよくてかっこいいなぁ。でもまだはじまったばかりだもん。私がんばるよ！』

し「フフ。そうですね。今の一撃の速さはさっきの訓練よりあがっていました。ですが、打ち込みがまだまだ甘いですよ？絢蘭ちゃんには腕力もあります。速さだけに気を取られていてはだめですよ。私がどう防ぐかあらゆる可能性を考え一手一手に力も込めて打ち込んできて下さい。」

しのぶが絢蘭に行っていることは、本来なら鬼殺隊士が柱の継子になった場合に行われる様な厳しい内容だ。
それを今日初めて竹刀を握った絢蘭にやらせている事が異常なのだが、彼女なら出来てしまう。
そんな気がしてしまうと、つい期待をしてしまう。
それほど先程の訓練で素人が成しえないことしていたのだ。


　『そうだよねいくらはやくなっても力いっぱいやらないとかんたんにはじかれちゃうよね。むずかしい…。はやく力いっぱいしなやかに、ねぇねの動きを考えながらしないをふるう。頭の中ではわかるけど体がまだおぼえてないみたい。』