万華鏡の姫君1章 〜特級呪術師&最強柱〜【鬼滅】【呪術】
第6章 6章 砕けた硝子の意味
参【でも何で今までこの俺が、お前を血の臭いが分からなかったんだ?こんなに旨そうな匂いをしているのに。】
『!!今までって…。もしかして村の人達を襲ってたのって…。』
鬼がニヤリと笑う。
その顔を見て、絢蘭の顔色が悪くなる。
参【そうだ。俺が食ってやったんだ。】
何故か自慢気にいい放たれた言葉に、有一郎を守っている結界への意識が一瞬と切れそうになる。
なんとか気持ちを制御するため、鬼の戯言を無視するよう心がけようとするが…
参【この村は爺と婆ばっかりで不味く飽々してたんだ。そしたら命乞いしてきた奴が、こっちに餓鬼の三兄弟がいるって言い出してよ。もちろんそいつは殺して喰ったけどな。】
『そ…そんな!酷い…。』
まるでそこら辺にあるものを食べるような感覚で話す鬼。
決して村の人にいい印象があるわけではない。
だけど、こんなに人の命を馬鹿にして喰らう鬼に殺されていいはずがない。
恐怖心と命を軽々奪った鬼への嫌悪感と、許せないと言う正義感などが入り交じり感情抑えるのに必死だ。
参【ひでぇのはお前らだろうが。言われた通りこっち来ても家一つ見つかんねぇ。二日も無駄にしちまった。けど今日いきなりお前の旨そうな匂いがしてきたんだ。何でだ?】
『そ、そんなの知らない!』
絢蘭も鬼も知りえるはずがないのだ。
それは、絢蘭が無意識のうちに張った、結界によるものだからだ。
父親が、呪霊に大怪我をさせられた時、二度とこんな事が起きないで欲しいと思った感情が、無意識のうちに村全体を結界で覆っていたのだ。
そのためこの村に鬼が立ち入ることができず、呪霊も内部で生まれるものを対処するのみで済んでいたのだ。
しかし、母親と父親の死を防げなかったことにより、精神的に大きく傷付いた時結界が緩んでしまい、鬼の侵入を許してしまったのだ。
それでも絢蘭達兄弟が今日まで、鬼や呪霊に襲われなかったのは、絢蘭が兄達を守りたい、大切な人をもう失いたくないという気持ちが、絢蘭達の家周辺だけ強い結界で守られていた。
だが、その大切な兄に事実をぶつけられた事に加え、本人が家から離れたことで結界が完全に破れてしまったのだ。
本人が気付かず守り、気付かず破ってしまったので、なんとも言いがたい。