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【NARUTO】月影の恋人(R18)

第7章 門出


「……、わかった」

親父さまがしぶしぶという感じで頷く。
わたしとカカシは目を見合わせて笑った。



あれから2週間が過ぎた。
親父さまの火傷もすっかりよくなり、今日、わたしは花街を出る。
親父さまはいつの間にかわたしに上等の着物を拵えてくれていた。
深い赤に、金の帯。花の刺繍が斜めに入った美しい着物だった。

「親父さま、ありがとう……」

「ま、馬子にも衣装やな」

素直じゃない感想も、今日は嬉しい。

「あとこれ持ってけ!」

もう一つ渡されたのは、風呂敷包み。
大きさの割に、ズッシリ重い。

「ん?これなんなん?」

開けようとしたわたしを親父さまが慌てて止める。

「これは向こうについてから開けるんや!」

「……わかった」

お別れの時間はあっという間に来て、馬車が到着したと連絡があった。

「親父さま、拾って、今まで育ててくれてありがとう。
体に気をつけて、元気でね」

「……今まで、ようやってくれた。結も、元気でな」

親父さまが私の頭を大きな手でポンポンと撫でる。
そんなことをされたのは小さい頃以来で、泣くまいと思っていたのに涙が一粒こぼれ落ちた。

「お、おい泣くな!せっかく綺麗に化粧したんやろ!!」

珍しく慌てる親父さまに、思わず笑ってしまう。

「ほら、しゃんとせい」

親父さまがピシッと襟を整えてくれる。

「お世話に、なりました」

わたしは目一杯頭を下げると、少し鼻を赤くしている親父さまに向かって微笑んだ。

「結、幸せになりや」

そう言って、親父さまは馬車が見えなくなるまで、わたしのことを見送ってくれた。
花街での生活は決して楽しいものではなかった。
でも、親父さまがいたから頑張れた。それに、カカシともここにいなければ出会えなかっただろう。
わたしは小さくなっていく親父さまごと、花街の風景をしっかりと目に焼き付けた。


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