第6章 痕
「親父さま、まだヘソ曲げてるん?」
来なれた結の部屋、事後の甘く気だるい体を布団に横たえて寛ぐ。
「うん。
ま、結への愛があるからこそだよね。
地道にいくしかないよ」
プロポーズのあと、結の身請けのために何度か楼主と話をしたが、未だいい返事はもらえずにいる。
結は小さい頃にここの楼主に拾われている。
楼主からしたら、娘みたいに大切に育ててきた結を、いつ死ぬかもわからない忍なんかには嫁がせたくない、ということらしい。
もっともだとは思う。
でも諦めるという選択肢もなかったから、承諾して貰えるまで何度でも足を運ぶつもりでいた。
「次はわたしも一緒に行く!」
「ダメって言われてるんでしょ?
大人しく待ってて。
絶対オッケー貰うまで粘るから」
「うん」
うつ伏せで顔だけ横向けて、嬉しそうに結が笑う。
色香を含んだその笑顔が綺麗でその赤い唇を奪う。
さっき結の中で果てたばかりなのに、キスだけでまたムクリと欲望が頭をもたげる。
サラリと流れる髪を撫でて、細い肩を抱き寄せる。
そのあとはもう言葉なんていらなくて、隅から隅まで結をもう一度愛し尽くした。