第5章 * 光の中のプロポーズ
2、3歩よろけてなんとか踏みとどまると、結が心配そうに見上げてくる。
「大丈夫?」
「ん、やっぱ緊張、してたみたい」
ふふ、と笑うと結も笑う。
オレはゴソゴソとポーチを探って小さな箱を取り出す。
「結、左手、かして?」
不思議そうな顔で左手を出した結の細い薬指に、赤い石のはまった指輪をそっとはめる。
指輪は結の指にピッタリだった。
「これ……」
「うん。婚約指輪。
仕事中は付けれないかもしれないけど、贈りたかったから……。
ってこれってプロポーズの前に渡すものだっけ?」
何度もシュミレーションしたはずなのに全然うまくいかなくて格好悪いな。
でも結はキラキラした涙を一粒零してこう言った。
「ううん、ううん……。
嬉しい。
すごい、嬉しい。
きれい……。
ありがとう……」
結は指輪を見ながら涙を流し続けた。
ああ、この涙は蛍よりも、この石よりも、何倍も綺麗だと思う。
「よかった。
この石、砂の国の特産で、永遠の愛って意味の石なんだって。
結のこと、愛してるよ。
ずっと、一緒にいてね」
コクコクと頷き結が涙でくしゃくしゃの顔でオレを見つめる。
愛おしくて仕方なくて、オレはその涙を袖の裾で拭うと、長い長いキスをした。