第5章 * 光の中のプロポーズ
はじめて口にした歯の浮くような台詞に急に恥ずかしくなり、オレは結に抱きついた。
「わっ!!」
勢いよくいってしまったからよろけてしまった結を、こけないようにしっかりと抱き寄せる。
「……カカシ?」
顔を覗き込もうとする結を手で制する。
「ちょ、待って。
今、恥ずかしさに耐えてるから……」
「さっきのキザな台詞のこと?」
「……うん」
「ふ、ふふ」
「もー、笑わないでよ」
抱きしめていた腕を緩めて、オレは拗ねた顔でしてみせる。
あー、笑った顔も、死ぬほどかわいい。
「だって、柄にもないこと言うから」
「うん」
笑いが止まらない結に釣られてオレも笑い出す。
ひとしきり笑って収まったころ、頬に手を添え、耳元に顔を落としつぶやく。
「でも、ホントにそう、思ってるから……」
「っ、ありが、とう……」
目をキラキラさせて頬を染める結がかわいくて、そのままキスをする。
「結」
「ん?」
「オレと、結婚して?」
まだおでこが着くくらい近い距離。
今日伝えたかったこと。
ずっと考えていたことを伝える。
口の中がカラカラに乾くくらい緊張している。
「けっ、こん……?」
結は言葉の意味を理解しようとするように、言葉を繰り返した。
「うん。
遊郭を出て、オレと一緒になってほしい」
「わたしで、いいの……?」
「うん。結がいい」
「わたし、ハサミどころか包丁も持てんし、料理も裁縫もロクにできひんよ?」
「そんなことのために結婚するんじゃないよ。
ただ、結にそばにいてほしい」
「わたし、性格だって喧嘩っ早いし女の子らしくもないで……?」
「うん。知ってるよ。
その全部、好き」
喋りながら結の唇や声が震える。
結は大きな瞳でオレを見つめると、ギュッと強く抱きついてきた。
「うん!結婚する……。
わたしも、カカシとずっと一緒にいたい……」
触れていた結の頬から、熱い涙がオレの頬につたう。
オレは自分で思っていたよりも緊張していたみたいで、結の返事にホッとして足の力が抜けてよろけてしまう。