第5章 * 光の中のプロポーズ
汗ばむ結の体を抱きしめると、ほのかに甘い匂いがした。
「はぁ、結、好き……」
頬に、瞼に、唇にキスを何度も落としながら、オレは果てを求めて強く腰を打ち付ける。
結は、強すぎる快感にもう聴こえていないのか、目をぎゅっと瞑り、ただ喘ぎ声をもらした。
「んっ、はぁ、あっあぁっ!っっっ!!」
「んっ……」
オレが最奥に欲望を吐き出すのと同時に、結が体を震わせてまたイク。
頭が真っ白になるほど気持ちよくて、最後の一滴まで注ぐように、ゆるゆると腰を動かすと、結の上に覆いかぶさるように脱力した。
あの日から、オレたちは会うたびに何度も何度も体を重ねた。
ただ、愛しくて仕方なかった。
触れずにはいられなかった。
オレはある決心をして、今日この部屋を訪れていた。
微睡む布団の中、お互い触りたいように体に触れたりキスしたりして過ごす。
「いま、何考えてんの?」
「んー、さっきの結、可愛かったなーとか、中、気持ちよかったなーとか、今、胸ちょっと当たってるなーとか」
「エロいことばっかやん」
クスクス笑う結が可愛くて、頭を引き寄せて唇をその髪に埋める。
「うん。あと、こうしてられて幸せだなって……」
結はオレを少しびっくりした顔で見上げ、そして満面の笑みでぎゅっとオレに抱きついた。
「わたしも幸せ……」
その小さな背中に手を回し、胸の中にぎゅっと閉じ込める。
「結?」
「ん?なに?」
結は眠そうにゆっくり瞬きして、オレを見上げる。
「次会うとき、デートしない?
部屋でこうやって抱き合うのも幸せだけど、結と行きたいとこがあるんだ」
「え?でも……」
結は驚いてから、少し困ったように眉を寄せる。
遊女は妓楼を出ることは許されないからだ。
「だいじょーぶ。
バレないように、夜中に抜け出せばいいよ」
結は目をまん丸にして、でもすぐにクスリと笑うとオレにピタリと身を寄せた。
「うんっ嬉しい!!」
「じゃあ、約束ね」
小さい子供がするみたいに小指を絡めて"ゆびきりげんまん"をする。
最後にどちらからともなくキスをして、オレたちはひどく満たされた気持ちで眠りについた。