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【NARUTO】月影の恋人(R18)

第1章 月下の出会い



 提灯の灯りが彩る花街。
今日も眠らないこの街は、様々な欲望をその喧騒の中に閉じ込めていた。
そんな灯りも人の目も届かないある妓楼の瓦屋根の上、闇にまぎれるように人影がポツリとあった。



ここはやっぱり落ち着くな……

 ここに上がるために、幾重にも着せ付けられた重い着物を脱ぎ捨てたから少し肌寒い。
でもあの座敷にい続けるよりはよっぽどよかった。

膝にのった小さなお盆には徳利とお猪口。
徳利からは細く湯気が昇っている。
わたしは1人、ゆっくりとお猪口を傾けた。


「あれ?先客がいた」

「う、ゴホゴホ…!!」

思わぬ声がして、わたしは飲みかけの酒で盛大にむせてしまう。

「ああ、ゴメンね。
驚かせちゃった?」

 口元を手で拭いながら声のした方を振り向くと、そこには長身の男が立っていた。
顔は暗くてよく見えないが、口元が布で覆われていて彼が忍だということだけはわかった。
片手をズボンのポケットにつっこみながら男はゆっくりと近づいてくる。
少し恐怖を感じながらも、わたしは動けずにいた。
いや。動かない、の間違いかもしれない。
今日わたしがどうなったって悲しむ人はいない。
だったらどうでもいいじゃないか、という投げやりな気持ちがわたしをそうさせていた。

男はわたしの真横に来ると、適度な距離をとって座った。
そしてわたしの手元を覗き込んでクスリと笑う。

「サボり?」

着物は脱いでいるが、髪と化粧はそのまま。
わたしが遊女だということは一目瞭然だろう。
だが認めるのが悔しくて、わたしはつい嘘を口走る。

「ちゃうし!
ちょっと酔い覚ましに来ただけ」

プイッとそっぽを向くと、男はますますおかしそうに笑いながら「ふぅん」と言った。
徳利とお猪口を持って酔い覚ましなんて矛盾があるにも程があるが、言った言葉は取り消せない。
わたしは顔が熱くなるのを感じながらも、気づかないふりをしてお酒を口に運び続けた。


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