第4章 実力試験は実戦で
宇髄さんの継子になって早一ヶ月が過ぎようとしていた。最初は精神的にやられていたことで体調不良をきたし、どうなることやらと思っていたが宇髄さんや奥様達に優しく受け入れてもらったことで新しい家族が増えたみたいに感じつつあった。
相変わらずの鬼師匠ではあるが、その甲斐あって私の基礎体力と身のこなしは格段に成長した…らしい。はっきり言えばよく分からない。宇髄さんとしか手合わせしてないから自分の実力がどれほどのものなのかを図る術がない。
自分が成長したかどうか分からないのは宇髄さんとやる打ち込みで一回も彼に一太刀浴びせたことがないからだ。
今日は宇髄さんとの地獄の鍛錬を終えると一休みして産屋敷様のところに行く予定だった。
一ヶ月前、初めて神楽家のことを聞いた時教えてもらった内容はその後宇髄さんにちゃんと報告して御礼を伝えているが、手を翳すだけで治癒するできる不思議な力だけは産屋敷様にも伝えていない。
家族以外で知っているのは宇髄さんだけ。
護衛の三人ですら知らないこと。
それを知っているからか宇髄さんは産屋敷様のところに行く時に必ず「あの能力は使うなよ」と念入りに言ってくる。
昔から「誰にも言ったら駄目。使っても駄目。」と言われてきたので、無闇矢鱈と使うことはないが、目の前で人が死ぬかもしれないと考えると母の時みたいに使ってしまうかもしれないとぼんやりと感じることがある。
使い過ぎたらどうなるのか誰にも分からない。
この能力がただの反動で疲労に襲われるのか、それとも寿命を縮めているのかも分からない。
知っている人もいない。
自分自身も分からない。
そんな私を知ってか知らずか宇髄さんは口酸っぱく能力を使わないように言ってくるのだ。
そろそろ出かけようと大きな荷物を持って玄関で履き物を履いているとほら…
「…ほの花。」
誰にも聞こえないほどの声で話しかけてくるのだ。
「何度も言うが…使うなよ?」
「はーい!分かってまーす!」
「よし…ならいい。気をつけて行けよ。」
その声がいつもより低いものだから私の心臓の拍動が煩いのは免疫がないから…。だけどその回数がだんだん増えていっていることに私は気付かないふりをした。