第22章 今の上官は風柱様です!※
「ほの花の様子が落ち着いたらこっちから連絡するわァ。それまで待ってろよ。」
そう念押しをして宇髄の家を出ると真っ直ぐに蝶屋敷に向かう。
先ず、預かるとは言ったが既にほの花は俺の家にいない。
昨夜は一晩だけ泊まると言う約束だったし、ほの花は朝起きると御礼だと言って朝飯を作ってくれて泣き腫らした目で蝶屋敷に向かった。
断られたらすぐに戻って来いと伝えてあったので、数時間しても戻ってこないのを確認してから宇髄のところに来た。
まぁ、胡蝶がほの花を断ることはないだろう。
もちろん俺がほの花を継子にした事実もない。
俺よりもどちらかと言えば胡蝶の方が継子の枠を増やしてでもほの花を継子にしたいのではないか。薬師としてかなり有能な彼女は喉から手が出るほど欲しい存在だろう。
こう言えば宇髄の導火線に火をつけることができると思ったから。
お互い遠慮してどう接すればいいのか分からなくなっている今、少しのきっかけで物事が動くことがある。
今回はそのきっかけを作ってやっただけ。
あとは然るべき時にアイツらを引き合わせてやるだけだ。
しかし、想定内の反応だと言いつつ、実際には宇髄の中で既に答えは決まっていたのだろう。
どんなに罵られようがほの花は自分の継子だとハッキリと言ってきた。
正直、あそこまでハッキリ言われてしまえばすぐにでも会わせてやるべきか迷ったが、今回はお灸を据える意味も込めて期間を空けることにした。
「…世話が焼ける奴らだなァ、本当。」
そう憎まれ口を叩いてみても、お互いを必要としあってる彼らを見るのは楽しいし、自分が頼んだ任務のことで仲違いさせてしまったのは責任を感じている。
だからほの花と仲直りするまではちゃんと見届けようと思っていた。
渡された薬箱は結構ずしりと重い。
ほの花を預かると言ったのは自分だが、荷物を預けられればそれと同時に彼女の身を任されたような気にもなった。
俺は薬箱を持ち直すと真っ直ぐ蝶屋敷に入って行った。
(本気で継子にしちまったら家が吹っ飛ぶな…。俺も胡蝶も…。)
人知れず吐いたため息は悲しみのため息ではない。
未来へと続く期待のため息。