第21章 桜舞う、君との約束※
部屋で着替えを済ませていると、自分の部屋で着替えてきた宇髄さんがまた部屋に入ってきた。
「飯食うだろ?雛鶴が此処に持ってきてくれるとさ。」
「あー…雛鶴さんに申し訳ないなぁ。でも、まだ今、お膳持って歩ける自信ない…。」
「やめとけ。全部ぶちまけるぞ…。」
鏡台で髪にもらった花飾りを付けていると、宇髄さんに後ろから抱きしめられた。
「…どうしたの?」
「忘れられたか?」
その言葉の意味が最初分からなくてぼーっとして鏡越しの宇髄さんと目を合わせると、呆れたようにため息を吐かれた。
「…どうやら忘れられたみてぇだな。」
しかし、数秒後、やっとその意味を理解した私はハッとしたように彼と目を合わせた。
「え、っと…、今の今まで忘れてた…。ありがとう。宇髄さんって凄いね…。ひょっとして変な魔術でも使えるの?!」
「阿呆か!いつもよりちょっと激しく抱いただけだわ!」
そうだとしてもあんなにツラかったのが嘘のように今の私の心は穏やかだ。
後ろにいる宇髄さんに凭れかかって上を見上げてみれば不思議そうにこちらを見る彼。
宇髄さんは初めて会った時も同じ能力があるのではないかと思うほど、彼の温かい手に助けられた。
今もこうやって私の心を救ってくれた。
「…わたし、もう宇髄さんがいないと生きていけないかも…。」
ぽろりと漏れ出た言葉は私の本音。彼のこの温もりを手放したくないし、一生此処にいたいとこの時死ぬほど願った。
それほどまでに私の心を満たし、豊かにしてくれるのはきっとこれから先、生きていても彼以上の人は現れないと心底感じたから。
「…上等じゃねぇか。じゃあ一生俺から離れんじゃねぇぞ。天国だって地獄だってお前となら行ってやるよ。」
それは聞いたことのあるような内容。昨日、宇髄さんが言ってくれたのだろうか。意識が混濁していてちゃんと覚えていない。
上から降ってきた唇を受け入れると昼間だと言うのにそのまま濃厚な口づけをしてしまい、畳に押し倒されたところで、昼餉を持ってきてくれた雛鶴さんと鉢合わせてしまった。
その後、私たち(主に宇髄さん)が、こっぴどく怒られたのは言うまでもない。