第21章 桜舞う、君との約束※
桜の季節は別れの季節であり、出会いの季節でもある。
そして、今日は別れの日。
「ぐすっ、ふぇ、ざみじー……。」
「な、泣き過ぎだろ…。すぐ近くじゃん。ほの花泣くなよ。」
「おい、琥太郎。俺の女泣かせてんじゃねぇよ。ぶっ殺すぞ。」
「こ、子ども相手に大人げないぞ!宇髄さん!」
私の"三日間寝太郎事件"の後、琥太郎くんとお母さんが宇髄さんが準備したお家に移り住むこととなった。
それと同時にもちろん同居も解消。
お母さんはすっかり体調も良くなり、食堂での仕事が決まったことで、少しずつお金を返すと言ってくれていたけど、宇髄さんの「ンなもんいらねー」の一言でめちゃくちゃ困ってたのは昨日のこと。
ぶっきらぼうで口は悪いけど、人に対して温かい。
男気に溢れた彼は私の自慢の恋人。
琥太郎くんは私が寝込んでる間、ころのすけの面倒も見てくれてすっかり彼に懐いていたので玄関で見送る今も少しだけ寂しそうだ。
「宇髄さん…、子どもに向かって、グズっ、ぶ、ぶっ殺すなんて…ひっく、言ったら駄目だ、よ…!し、心臓、とめてやるぞ…!くらいにしないと…!」
「…おい、お前のが生々しくて派手にこえーぞ…。」
「どっちも怖ぇわ!!似た物同士め!!」
私たちのやりとりをお母さんももう止めることはしない。
こんな風にふざけ合うのも今日が最後なのだ。
まぁ、家近いけど。
「たまにはころのすけとも、遊んでやってね…?」
漸く止まりかけた涙を拭うと、琥太郎くんにそんなお願いをしてみる。
家も近いし、今回はただ寝てただけだけど、いつ死んでもおかしくない仕事をしている以上、もしもの時、ころのすけを見てくれるとありがたいと思ったから。
「ああ!任せろ!ほの花が忙しい時は俺が散歩に行ってやるからもう無理すんなよ!宇髄さん、魂抜けたみてぇだったぞ。」
「て、てめぇ!恥ずいこと言うなって!!」
「だって本当のことじゃねぇか。意気消沈してぼーっとして泣きそうになってたじゃ……「あーあーあーあー!うるせぇな!クソ餓鬼!」
「何だと!!本当のこと言っただけだろ!!」
「よし、来い。最後に餞別にぶん殴ってやらぁ!」
ねぇ、感動の別れどこいったの?
あまりにいつもの二人過ぎてこの後、私が怒って雷を落とすまで二人のいい合いは続いた。