第20章 未来花嫁修行※
やることがなくなってしまった私が居間で食事の準備をしようと向かうと、そこには琥太郎くんと正宗たちがまさに今、私が請け負おうとしていたことをしてくれていた。
「あれ?食卓の準備してくれてたの?」
「ああ、ほの花様、おはようございます。」
「正宗さんが教えてくれたから手伝ってんだ!」
「そっか。琥太郎くん、足は大丈夫?」
「おお!ほの花のおかげですっかり良いぜ!」
元気に足を上げて復調具合を見せてくれるが、すっかり綺麗に整えられた食卓にまた出鼻を挫かれたことに口を尖らせた。
「私も準備をしたのに〜…。」
「あはは、ほの花様は宇髄様をお部屋で出迎えてあげてください。それが一番喜ばれますよ。」
「…うん。」
確かにもうそれくらいしかやることはない。
彼の帰りを出迎えて労うことも大切なことだとは思うが、婚約者としては彼の身の回りのことをしたいという欲もある。
しかし、この屋敷には良くも悪くも私なんか居なくても事足りてしまうほどの人手があって、どこに行っても私なんか用無し。
結局のところ私は仕事を滞りなく行い、宇髄さんに甘えることしかできない。
そこには感謝の気持ちしかないが、そんなことで良いのだろうか?という不安もある。
私の母も仕事の傍ら父に尽くしていたし、そんな母を見ていたからこんなことでは婚約者とは名乗れないと思ってしまう。
トボトボと部屋に戻ると薬箱が目に入る。
「…私って、薬以外では役立たずだなぁ…。」
鬼殺隊として鬼狩りをしても
薬師として人を助けても
婚約者としての私は赤点だと思う。
たまに作るお弁当ですら「無理しなくて良い」と言わせてしまう私は彼に甘えすぎだと思う。結婚しておらずとも将来を誓った相手がひとつ屋根の下で共に暮らしているならば尽くさずにどうするのだ。
ため息を吐くと薬箱を撫でて自分の無能さを呪った。