第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
思い出すのは情交中のこと。
ボーッとした頭で何を言おうとしているのか自分でも分かっていなかったと思う。
それでも口が勝手に話し出すのだ。
「…宇髄さん、との子ができたら、あんな風に喧嘩するのかな…って。」
「…あー、…まぁ、あの年頃になったらするかもしんねぇな。」
「…そんな日が、いつか来たらいいな…って。実際には毎日喧嘩されたらちょっと困るけど…。」
「それはわかんねぇな。俺は派手にお前が好きだし、自分の息子であろうと張り合う可能性は大いにある。」
それはただの例え話。
現実的ではないし、昨日だって射精は外に出したことは知っている。
避妊をしてくれているのは鬼殺隊だからで、鬼を殲滅できるかどうかなんてわからない。
だから今まで考えないようにしてた。
考えたらそうなりたいって思ってしまうから。
でも、そんな風に思うのは琥太郎くんとの掛け合いが未来を想像させてしまった。
ただの継子だったのが、恋仲となり、婚約者と呼んでくれるようになって、家庭を持つと言うことが現実味を帯びて来たように感じた。
志半ばでそんなことを考えるのは不謹慎だと思うのに、昨日は止まらなかった。
彼との未来を心が欲していたようにも思った。
「…ほの花、鬼殺隊辞めるか?」
「え?!な、何で?」
「そうしたら…、………いや、ごめん。俺だってどうなるかわかんねぇのに無責任なことできねぇか…。」
宇髄さんが言い淀んだ言葉。
「そうしたら…家族になろう。」って言ってくれるつもりだったと思う。
その瞬間、物凄く嬉しくて全身に鳥肌が立った。
それでもこんな例え話にすら、そうやって言ってくれようとする彼が好き。
"いつか"は来るか来ないか分からない。
もし、来たのなら…私は世界で一番幸せ者だと思う。
「…ふふ。鬼殺隊は辞めないよ。宇髄さんと戦う。でも、その"いつか"を夢見るのはいいよね?」
「…"いつか"じゃねぇよ。近い未来の話だろ。願いは強く想えば想うほど叶うんだ。諦めるようなこと言うなよ。お前は俺の嫁になる運命なの。」
強い言葉に心を揺さぶられる。
そうだ。諦めない。
鬼なんかに未来を決めさせない。
そのいつかは夢物語なんかじゃない。
私たちの近い"未来"なのだから。