第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
「今日さ、俺も行っていいか?」
宇髄さんがそんなことを言い出したのは朝駒の時。昨日、借金取りを追っ払った時に怪我をしたことで怒っていたはずでは…?
私は今日とて、まだ体調が回復しきっていないお母さんの様子を見に行こうと思っていたので、琥太郎くんの家に行くつもりだったのだが…。
「…え?!琥太郎くんのとこに?」
「おお。今日昼は休みだけど、どうせお前はソイツん所にいくつもりなんだろ?俺を置いて。」
"俺を置いて”と言う所に若干の嫌みを感じるが、そうする気満々だった私は言い訳もできない。
お味噌汁をズズっと啜り、後ろめたさまで吸い込みたいと思ったが、彼の視線からは逃げられない。
「…い、良い、けど借金取りの人はいないよ?」
「わーってるって。居たならぶっ殺すけど、それはいいよな?だって俺の女傷つけたんだからそれくらいいいよな?」
"それくらいいいよな?"の内容が惨すぎる。最初から死刑宣告をしてくる宇髄さんだが、彼の強さならばあの人たちを本気で秒で殺せてしまうだけに顔を引き攣らせる。
「い、居たとしても駄目!!私だって鬼殺隊のことを考えて手を出さなかったんだよー?!」
「………隠密に事を済ませるしかないようだな。」
急に元忍感出してきたーーー!!!
ニヤリと笑って肩を組まれると恐ろしいほど美しいお顔で怖いことを言ってくる。
「心配すんな。俺は秘密裏に動くのは得意だ。足がつかねぇように地獄に送ってやるから安心しろ。」
全然安心できない。何ならそれなら来ないで欲しい。私が昨日あそこまで頑張って手を出さなかった意味が完全に無くなる。
「い、居ないと思うけどね…。私、昨日念書書かせたし。」
「は?お前、昨日名前知らねぇって言ったじゃねぇか。」
「……………あ、あはは…っ!て、てへ」
「あとで寄越せよ、それ。…腕が鳴るぜ。こんなに早く血祭りにあげてやれる日が来るとは思わなかったぜ…!」
手を出さなかった意味が完全に無くなるような状況にしたのはまさかの自分。
食事中だと言うのにどう痛ぶってやろうかと言うことを意気揚々と語ってくる宇髄さんの目は
めちゃくちゃ輝いていた。