第17章 君色日和※
あやめちゃんは草餅を食べてお茶を飲むとすぐに帰っていった。
その姿を見送ると、私も帰る準備を始めた。
「お前、人たらしだな。」
「え?また悪口です……悪口?宇髄さん酷いなぁ…。」
そうだった。二人きりの時は敬語を使ったら駄目なんだった。今のはギリギリ良いと言ってほしい。そうでなければ私は限りなく微妙な言葉遣いを暫くは続けなければいけないのだから。いくらお仕置きされても足りない気すらする。
「お、偉いじゃん。ちゃんと覚えてた。よしよし。」
意外だったのか頬を緩ませて撫でてくれる宇髄さんはとても嬉しそう。こんなことでよろこぶならもっと早く直す努力をすべきだったのかもしれない。
「だってお仕置きが増えるばかりなのは嫌で…….だもん。それより悪口言うなら私もお仕置きしま…するからね。」
「…ククッ、はいはい。悪口じゃなくて、事実を言っただけだろ?男でも女でもすぐに好かれやがって。俺だけに好かれてりゃいいのによ。」
「…あやめちゃんのこと?彼女は私のこと好きじゃないと思うけど。でも、許してくれたのかな?優しくしてくれて嬉しかった。」
「あのな、この場合、お前が許す側の立場だろうが。馬鹿なのか?」
心底呆れて信じられないと言った顔を向けてくる宇髄さん。
馬鹿にされるのは慣れてるけど、これも全て私のことを心配しているからだということが分かっていれば不思議と落ち込まない。
嫉妬に狂って喧嘩してしまったけど、やっぱり私は宇髄さんが好きで、根底にお互いを想う気持ちがあることを理解していれば嫉妬はすれど、すれ違うことはないと思う。
「私も悪かったから喧嘩両成敗です、だよ、だもん…。」
「語尾何個言ってんだよ、お前。」
「敬語って簡単……だね。」
「普通逆だろ。」
むぅ…とむくれていると宇髄さんが急に後ろから抱きしめてきて耳元で愛を囁くから私の顔は真っ赤に染まる。
"でも、俺、お前のそう言う底無しに優しいところすげぇ好き"
こんなところで口づけなどしたらしのぶさんに怒られるかもしれない。
それでも私たちは我慢できなくて引き寄せられるように触れるだけの口づけをした。
お互いの愛を確かめ合うように。