第15章 君が生まれた日※
宇髄さんにそんな風に言われて嬉しくないはずがない。
もちろん婚約者だと言われたけど、それでもこの家に置いては後から来た女だし、出しゃばったりしたらダメだと思ってきた。
それなのに宇髄さんはそんな私に欲しい言葉をくれる。
大好きで大好きで大好きな宇髄さんに"此処はお前の家だ"と言われて物理的な意味でも帰ってきていい場所だと言われると温室が欲しいことも彼におねだりしてもいいのではないかと思わせてくれる。
「おい、分かったのか?呆けてんじゃねぇよ。」
「わ、分かりました…!あの、じゃあ、…温室、欲しいです。」
「ん、それは分かったから。だけど、全ッッ然色気のないモンだな。ったく…。」
呆れたようにため息を吐く宇髄さんだけど、縁側に続く襖を開けると庭を見て思案してくれている。
「どれくらい大きさあればいい?お前ん家にあったくらいのでいいか?」
「は、はい!あれくらいあれば…!」
「了解。大急ぎで作らせるからちょっと待ってろよ。」
後ろを振り向きニカッと笑う宇髄さんが外から差し込む陽の光で神々しく感じてしまう。
私はそこまで走っていくと背中に抱きついた。
「…宇髄さん、ありがとうございますぅ…!」
「これくらい誕生日じゃねぇ時に言ってこいよなー。」
「は、はぁい…。」
「そんなに遠慮しいでこの先どうすんだよ。俺はお前に何でも買ってやりてぇのに。」
「欲しいもの…できたら言います!」
「アテになんねぇ…。言う前に自分でサクッと買ってくる奴だからな、お前は。」
後ろから抱きついてた私を引き離すと前から強く抱きしめてくれる彼の心臓の音が聴こえる。
彼にどう言ったら伝わるんだろう?
私はもう一番欲しいものを手に入れちゃってるからこれ以上欲しいものなんて見つからないんだ。
それでも、彼がそれで喜ぶなら今度は欲しいと思ったものを買ってもらおうか。
いま、私の欲しいものは"宇髄さんが喜んでる顔"。