第14章 【VD特別SS】初めての愛をあなたに…※
二月十四日
それは女性にとって特別な日だった。
私の家では、母が異国出身のため普通の家庭とは違う異国の文化が根付いていた。
その一つが"ばれんたいん''だ。
母の母国では男性から女性にお菓子を贈る行事らしい。想いを寄せる女性に告白と一緒にお菓子を渡すなんて素敵〜!と思ったが、日本ではそんな文化はなく、母は催促するのも気が引けたようで"女性から好きな男性に渡しちゃえばいいのよ!"と我が家独自の恒例行事が始まった。
当日は朝から"ちょこれぇと"やら"くっきー"やら母から教わりながら異国のお菓子を一緒に作る日。
それを父や兄、護衛である正宗たちに渡していた。
いつか恋仲の男性に贈りたいなぁ…なんて思うこと19年間。
漸く私の想いが報われる日が来た!
今日、私は宇髄さんにお菓子を作ってお渡しするのだ!!
そう意気込んで材料を持って台所に行く途中で雛鶴さんとまきをさんと須磨さんに会った。
「あら、ほの花さんたくさん抱えてどちらへ?って…食材…?何か作るんですか?」
「はい!そうなんです〜!作ったら皆さんにもお渡ししますね!」
「何を作るんですか?変わった材料ばっかりですね!」
まきをさんがそう不思議そうに私の手の中を覗き込むものだからこれを集めるのに苦労したことが思い出された。
うちの家庭は母の母国から事あるごとに個人輸送という形で小麦粉やらちょこれぇとやら砂糖やらが届いていて、よくそれを父と受け取りに行っていた。
当たり前に家にあったものが町でなかなか手に入らないなんてことは知りもしなかった。
あちこち探し回って挙げ句の果てには洋菓子を取り扱っている甘味処に仕入れ先を聞いてやっと手に入れたものばかり。
これも全ては宇髄さんにお菓子を渡したいがために。
初めての"ばれんたいん"を初めての"恋人"にわたしたい。
私の頭の中は乙女心で溢れている。