第48章 【番外編】宇髄家のこんな一日
だからほの花とて雛鶴の涙は胸が痛い。
そんなことを気にさせてしまっていたのかと思うと申し訳なさが募る。
ほの花と天元のことを想い、自らの妊娠にも手放しで喜べない雛鶴の姿は痛々しくて仕方ない。
天元と顔を見合わせたほの花は二人で笑い合った。
天元とて同じ気持ちだ。
今は無理だとしてもいずれ二人の子どもは欲しい。だが、時期が今ではないだけのこと。
「おいおい、雛鶴。そんなことで泣くな。」
「…っ、だ、って…、」
「そうだよ、雛ちゃん。体が治ったらそう言うことが来ると思うし!そんなことより喜んであげないとお腹の子が可哀想だよ?」
「…っ、ほの花っ、ちゃん…!」
二人の言葉に漸く涙を拭いて、笑顔を浮かべる雛鶴にホッとした。
隣で寄り添っていた正宗も顔を上げて頭を下げる。
「…ありがとうございます。」
「おいおい、お前まで湿っぽくなるなよな。父親になんだろうが。しっかりしろ。」
「そう、ですね。すみません。」
「そうだぜ!俺のこと大好きで『てん兄と結婚する〜』って言ったらどうしよう!!な?!あっははは!」
「……女の子かどうかはわかりませんが、宇髄様だけは…ちょっと……。」
「あんだと?!テメェ!!!」
あまりに嫌そうに正宗がそう言うので部屋は和やかな空気に包まれた。
幸いなことにこの家に住むのは四組の夫婦。
一人が出産をするにしても助け合って暮らしていける。
苦楽を共にして、過去にはいろんなことがあったけどそのどれも無駄なことではない。
いま、目の前で妊娠が分かって共に喜べる家族がいると言うことは他の家庭よりも心強いというもの。
その後、まきを、隆元、須磨、大進にも雛鶴の妊娠が伝えられたことで数日間は宴会が続いた。
悪阻で苦しむ雛鶴だったが、数ヶ月経つとそれも無くなり、無事に女児を出産した。
そして、月日は流れた──
「…おとうたまーー!!おかあたまーー!!!」
「またあの子がぼくのおやつとったーー!!!」
「おとうたまー!むしいたーー!おかあたまないてるーー!!」
今日も宇髄家はいつも賑やかだ。
そこに子供たちの声が徐々に増えていくのはもう少し後のこと。