第47章 【番外編】貴方とならばどこへでも※
「て、てんげん…い、痛いよ、待って?」
手を引っ張っていたのは私のはず。
それなのにいつの間にか天元に引きずられるように手を引かれている。
声をかけても少しも反応してくれなくて、悲しくて泣きそうになった。
怒ってるのだけが伝わってくるけど、何で怒ってるのかもよくわからない。
いや、声をかけられたのが気に入らなかったのかもしれないが、そんなこと…不可抗力だから仕方ないではないか。
違う。
そんなこと言っても無意味だ。
ただ怒らないで欲しい。
せっかく天元と楽しい旅行に来てるのに、機嫌悪くなってしまったらそれどころじゃないではないか。
それなのに部屋に帰ってきた天元は入るや否や私を壁に押し付けて口づけをしてきた。
熱い唇はいつもと変わらないけど、いつもより強引に舌をねじ込んできたかと思うと腰を引き寄せられて帯を外される。
布団が敷いてある部屋でもなく、此処は家で言う玄関先。
一枚扉を隔てて、人が歩いていく音すら聞こえてくると言うのに。
くちゅ、という深い口づけの音とともにぱさりと落ちたのは私の浴衣で、一糸纏わぬ姿にされたのがわかると流石に天元を制止する。
「…っ、てん、げん?や、めて…?せめて、中で、し、よ?」
「…何で?お前は全然わかっちゃァいねェからよ。分からせてやるよ。」
「な、何、わかって、ない?って。」
意味がわからない。
先ほどの出来事で私が何か粗相をしたであろうか。
確かに声をかけられたが、それでどうこうしようだなんて思っていない。
私には天元と言う夫がいるのだから当たり前だ。
不義を働いたと言うならばこんな怒りも納得できるが、全然腑に落ちない。
「隙だらけなのが…わかんねぇんなら…、全身に俺のモンだって印つけてやる。」
「ちょ、ちょっと?待ってよ…!」
「待たねぇ。」
天元は私の制止も取り合わずにそのまま首筋に噛み付いてきた。
──ガリッ
「んんっ!!」
所有印をつけられるのはよくあることだが、初めから噛みつかれるのは珍しい。
それほどまでに怒らせたのは分かるが、痛みで体に鳥肌がたった。
「っ、てんげ、ん…!い、たいよ…!」
そう言えば、ちゃんと少しだけ優しくしてくれるものだからうっかり気持ちよくなってきてしまうのもまた天元の狡いところ。
結局、私はこの人に堕ちているのだ。