第47章 【番外編】貴方とならばどこへでも※
「なぁ、ほの花。」
「ん?なぁに?天元。」
「そろそろさ、旅行にでも行くか。」
「……へ?!」
鬼舞辻無惨との最終決戦の後、あまりに大きすぎる代償に落ち込んでいた。
体の調子もイマイチ戻らなかったので暫く塞ぎ込んでいたのだが、漸く気持ち的にも体調的にも落ち着いてきた頃、天元が突然「旅行に行こう」と言い出した。
「…え、と、突然どうしたの?」
「突然じゃねぇよ。ずーーーーーーっと俺は行きたかったの!お前と!アイツらは事あるごとにさくっと旅行行ってたけどよ、俺ら行ってねぇじゃん!!」
アイツらと言うのは同居している六人のこと。
それぞれ恋仲になり、今や夫婦となった。
そうなれば必然的にそれぞれで行動することは多くなる。
入れ替わり立ち替わり旅行に行ったりしていたために、よく家には彼らのお土産が置いてある。
私のために甘味を買ってきてくれることも多いので、密かな楽しみになっていたのだ。
だが、確かに私たちは行ってない。
精神的に落ち込んでいて、体調もイマイチだった私のことを考えてきっと天元のことだから口に出さずに我慢してくれていたのだろう。
それ故、この発言だ。
「…そ、そうだね。確かに…。旅行かぁ…。考えたこともなかったよ。」
「じゃあ考えろ。俺らもう夫婦なんだぜ?ちったぁ自分たちのことやってもバチは当たらねぇぜ。さ、どこ行く?」
天元がズイッと顔を近づけてきたので若干仰反った。
よほど旅行に行きたいのだろうか。目はギラギラとしていて反論の余地はなさそうだ。
しかし、懸念事項もないわけではない。
私とて旅行に行きたいと思う反面、行っても大丈夫だろうかという不安もあるのだ。
「…遠くに行って…途中で熱出したりしないかなぁ…?そしたら天元に迷惑かけちゃう…。」
そう、確かに体調は安定してきたが、そんな遠出もしたことがないので、体がついていくのか心配だったのだ。
せっかく行った旅行なのに天元に迷惑かけて帰ってきたって言うのでは行く意味さえ見出せないから。
しかし、不安で目線を彷徨わせる私に反して呆れたような顔を見せるのは大好きな旦那様だ。
私の額を指でツンと突っつくと柔らかく笑った。