第46章 【番外編】束の間の休息を君と
手を握ったと言うことで必然的に見つめ合う形になった二人を目の当たりにして、隣にいたほの花が手で顔を覆って俺の懐に飛び込んできた。
(……おいおい、人のまぐわい見てるわけじゃねぇのによ…。まぁ、可愛いけど。)
ほの花からしてみれば、俺が初めての男だし、家にいる奴らのイチャイチャはもう既に風景だ。
胡蝶とは仲良くしているのだから仲の良い奴の良い感じの空気に当てられたのだろう。
恥ずかしがるのは構わないが、俺たちは既にヤるとこまでヤりまくっているというのにこの初心な反応に顔を引き攣らせた。
(…コイツ、一生まぐわいの時に恥ずかしがるつもりかよ。)
未だに夜着を脱がせる時に恥ずかしそうにするほの花にまぐわいの誘いを受けたことはない。
まぁ、鬼殺隊で日夜戦っていた時には人の恋路など目を向けることもできなかった。
鬼の動向が静かなこの束の間の休息だからこその穏やかな時間帯だろう。
「あ、…そうですか。ならば手を離してください。」
「嫌だ。」
「どうしてですか?」
「………何となく…?」
おおおい!!
冨岡ァァアア!!そこは"好きだから"とか何とか言っちまえば終わりだろうが!!
そして胡蝶も察してやれ!!
何なんだ、コイツらのこのヤキモキする感じ…!ジレってぇぇええええ!!
心の声を漏らすわけにもいかず、必死に頭を抱えている俺の様子に気づいているほの花だけが心配そうにこちらを見上げてくるが、正直言えばほの花もそう役には立たない。
経験は俺だけ。
他の男との恋愛など経験はない。はずだ。いや、あったらその男ぶっ殺す。
付き合ったことはないにしてもまさか誰かのことを好きになったことがあったりするのか?
話が脳内で横道に逸れたことに反省しつつ、仕方なく目の前で膠着状態の二人に助け舟を出すことにした。
「おいおい、イチャイチャすんなら飯食ったあとにしろよなァ?ほの花が恥ずかしがってんだろ?」
「イチャ…?!な、し、してません!」
俺の言葉に胡蝶だけが反応して手を振り払ったことで冨岡にジッと睨まれた気がしたが、ため息を吐くしかない。
(…いやいや、今のは俺は悪くねぇぞ。しっかり決めろよ。男なら)