第46章 【番外編】束の間の休息を君と
「おーいーしーーー!!お肉美味しいですねぇ!!!」
「おお、もっと食え。お前はあと百枚くらい食え。」
「食べれそう!!こんなに美味しいなら!!よーし食べまくる!!!」
牛鍋だけでなくとも、なんでも最初の一口というのは美味しいもので、私はこんなに美味しいなら百枚なら余裕だと思った。
豆大福ならば百個くらい余裕で食べられるのは大好物であり、脳が美味しいと感じているからだ。
と言うことは目の前のお肉を美味しいと感じているのだから余裕で百枚食べられると思っていたのに……
──五分後
「………おなかいぱい……。」
「五枚しか食ってねぇだろーが。お前な、百枚への道はまだまだだぞ。」
「ほの花さん、すっかり胃が小さくなってしまって…。確かに昔に比べると半分くらいしか食べれてないですねぇ。食欲増進の漢方でも煎じて飲んでみては如何ですか?」
「……自分の薬なんて飲んだら余計に食欲失せそうですよぉ…」
ほんのたまに薬の調合もするようになってはいるけど、自分の薬の苦さは変わらない。
良薬口に苦しとは言っても、今の私は薬でお腹がいっぱいになってしまうのがオチだろう。
「……米なら食べられるんじゃないか?」
天元としのぶさんにあまりの少食ぶりを心配されていると、今まで一言も話していなかった冨岡さんがそう声をかけてくれた。
「…え?」
「神楽は…豆大福が好物なのだろう?餅が好きなら白米なら食べられるんじゃないのかと思っただけだ。」
「あ、えと…はい。豆大福好きです。ごはん、なら食べれるかも…もう少し、食べます。」
コクンと頷くと冨岡さんは再び黙々と牛鍋を食べ始めたが、突然話し出した彼に度肝を抜かれたのか天元としのぶさんはいまだに目が点だ。
「……冨岡…、まさかと思うけど、お前…ほの花に気があるんじゃねぇだろうな?」
「何言ってんの!天元!そんなわけないでしょ?!?!」
だって隣にいるしのぶさんのことが好きだと教えてくれたのは天元だ。
彼の思考回路を理解するのはまだまだ道半ばだ。
「生憎、宇髄の嫁に手を出すような趣味はない。」
しかし、淡々と冨岡さんがそう言ってくれてことで何とかその場は収まったのだった。