第43章 【番外編】ここに、いるよ。
「眠ーい…。」
これは俗に言う幸せボケと言うものなのだろうか。
天元と結婚してからと言うもの本当に何の不自由もなく暮らしている。
鬼殺隊士として戦っていたことなんて夢だったのではないかと思うほどに。
もちろん共に戦った人たちのことを忘れることはないが、毎日毎日愛おしい人に愛される日々が続くといつもお風呂に入っているかのような気分になる。
「ほの花ちゃん。」
うつらうつらと寝そうになっていると後ろから"あうー"と言う可愛い声と共に雛ちゃんの声が降ってきた。
「あ、うん!どうしたの?真雪ちゃん〜!おいで〜。」
「ふふ。子守りをお願いしようと思ったの。いい?」
「うん!もちろん!お出かけする?」
「そうなの。天元様がこの前たまには二人で出かけてこいよって言ってたでしょ?行かせてもらおうと思って…。」
頬を染める雛ちゃんは少女のように可愛くて目尻を下げた。
正宗と彼女との間に女の子が生まれたのはつい三月ほど前のこと。
真っ白な雪が降る日に生まれたその子は天元が"真雪"ちゃんと名付けた。
毎日慣れない育児で疲れも溜まっている雛ちゃんを見て、天元が鶴の一声で休養してこいと言ったのは一昨日。
遠慮する二人を強引に言い包めることができるのはやはり天元だけだ。
今日はまきをちゃんと隆元、須磨ちゃんと大進は桜祭りに出かけていて、天元は不死川さんと冨岡さんに会いに行っている。
この家には私と雛ちゃんと正宗しかいなかったが、ちょうど暇を持て余していたのだ。
真雪ちゃんと遊ばせてもらおう。
「行ってきて〜!真雪ちゃん、ほの花おばちゃんと遊んでね!ふふ。」
「もう…。おばちゃんだなんて歳じゃないでしょ?豆大福買って帰ってくるけど、いくつ欲しい?」
「え…!んー…、30個と言いたいところだけどまた天元に怒られちゃうから10個にしておく。」
「ふふ。私も母乳出すにはお餅がいいって言われてるんだって!」
久しぶりに楽しそうな雛ちゃんを見ると私も嬉しくなる。
最近は夜な夜な泣いてる真雪ちゃんのお世話で昼も夜もない生活を余儀なくされている雛ちゃんに私たちもお手伝いはしてるつもりだけど、やっぱりこう言う時は好きな人と二人で過ごすのは最高の栄養になるのだろう。