第9章 『実家に帰らせて頂きます』※
冬は布団をかぶっていてもどこかしら出ている肌に突き刺さるような冷たさで起きることが多いと言うのに今日はなんて温かいんだ。
まるで春みたい…。
もっと微睡みに浸かっていたいというのに毎朝決まった時間に起きる生活をしていると勝手に目が覚めてしまう。
今日も今日とて目が覚めてしまうといつもの天井……
ではなく、何やら肌のような質感のものが目に入る。
ああ、珍しく横を向いて寝ていたのか…。
こんな畳の色だっただろうか。
手を這わせて触ってみるとどう考えてもそれは人の肌の感触。しかも、やけに硬い。
(……あれ、まだ夢…?)
「…おいおい、朝から大胆だなぁ、ほの花ちゃん。」
(…大胆…?)
頭の上から降ってきた声にボーッとした頭で見上げてみるとそこにいたのは見慣れた美丈夫。
"何だ、宇髄さんか…"と思ったのはわずか数秒で、何故ここに宇髄さんがいるのか全く意味が分からずに勢いよく起き上がった。
「っ、え?!う、宇髄さ、?え、あ、と、お、お、…」
「お?」
「お、はよう、ございます…。」
「おー、おはよ。」
「え、えと、今日も、寒いですね」
「そうだな。裸だしな。」
「……え?」
「とりあえずこっち来い。朝からそんな姿見せられたら盛っちまうぞ。」
苦笑しながら手招きをする宇髄さんに自分の姿を確認すると一糸まとわぬ姿で顔を引き攣らせると全速力で布団に戻った。
(んなぁぁぁあーーーーー?!?!?!?!)
死ぬほど恥ずかしい想いをすると声も出ないのだとこの時初めて知った。
それと同時に下半身に鈍い痛みを感じて、潔く昨日のことを思い出した。
(…そうだ、…そうだぁあ、そうだったぁぁぁあ…!!)
私は昨日この人に"初めて"を捧げたのだ。
布団をかぶってその時のことを思い出せば、あれよあれよと恥ずかしい出来事が甦ってきてなかなか顔を上げられない。
そんな私の頭をヨシヨシと撫でてくれる宇髄さんは何も発しないのできっとちょっと意地悪そうな顔でこっちを見ているに違いない。
私なんかよりも何枚も上手な彼に叶うはずがないのだ。