第39章 陽だまりの先へ(終)※
指を何とか二本ねじ込んだところでほの花の瞳が少しだけ不安げに揺れて俺を見上げた。
「…宇髄さん、私で、満足、できる…かな?」
そして、言い放たれた言葉に俺は目を見開く。
"私で"というのは他の女と比べているわけではないことくらい分かる。
ほの花が比較しているのは過去の自分だ。
記憶がある時の自分と今の自分の中でいつも不安を感じていたのだろう。
そんなことを真剣に考えて、気に病んでいたのであれば本当に馬鹿な奴だ。でも、愛おしい。
「俺はさ、ほの花。好きな女の初めてを二回ももらえんだろ?」
「…え…?」
「其れってよ、ド派手に最高だろうが。」
「……宇髄さん…」
誰でも好きな女の"初めて"が欲しいと思うわけではないかもしれない。だが、俺は欲しい。
初めてほの花を抱いた時、自分しか知らないことが本当に優越感だった。
俺の前だけで見せるほの花の表情、嬌声。
それは俺だけのもの。
そして、いまもう一度ほの花の"初めて"をもらえるのだ。
そんなことできる男なんて早々いないだろう。
だからこそ嬉しくてたまらない。
「俺はほの花ならさ、何度だってお前の初めてが欲しい。他の男に譲るなんざ、考えたくもねぇ。」
記憶が戻らなくて、他の男のことを好きになっちまうんじゃないかと不安にならなかったかと問われれば確かに不安になったこともあった。
でも、お前を信じた。
「…"私の最初で最後の人になって"」
「……?」
「お前が俺に言った言葉だ。俺はその言葉をずっと信じてた。だからお前の"初めて"をもらうのは俺以外いねぇんだよ。舐めんなよ?」
此処に前のほの花がいたとしても覚えていない言葉かもしれない。でも、俺は忘れられない。
それだけ言われて嬉しかったから。
「…じゃあ、私も…宇髄さんの最後の人にしてね…。」
「…!!!!」
知らない筈。
思い出してはいないと思う。でも、その会話が甦る。
あの時の気持ちが此処で再び燃え上がる。
「当たり前だろ?」と口角を上げるとだいぶ弛緩していた蜜壷の中に埋められた指をギリギリまで引き抜いた。
「ッッ!!んん…っ!」
跳ねる体をそのままに俺は二本の指の挿抜を始める。
体がほの花を求め過ぎて限界だったから。