第39章 陽だまりの先へ(終)※
「あーー…でもよぉ、結構つらいんだよなぁ…。」
「え?何がですか?ほの花様が何か粗相を?!」
弱音と本音が口からまろび出ると隆元が心配そうにそう聞いてきて、全員の視線が俺に注がれているのがわかる。
それを見て首を振って即座に否定をすると苦笑いをしながら話をし出す。
「…性欲がやべぇんだって…」
「「「あーー……」」」
これは男だけしか分からないことだと思う。
女子がどうなのかなんて聞いたこともないし、知り得ないことだが、男は兎に角、欲が溜まってしまうとつらいのだ。
「毎日毎日ほの花が近くにいてよ、クッッソ可愛い顔で見つめられるとさ、押し倒したくなるだろ?!」
「ま、まぁ…、好きな人がそばにいて手を出せないつらさは分かりますが…」
「だろ?!夜な夜な一人で抜く俺の気持ちを考えてみろ!!可哀想だろ?!そう思うだろ?!」
「そりゃぁ思いますけど…」
思いますけど…どうしようもないではないかと言いたいのは顔で伝わってくる。
俺とて分かってる。
記憶のないほの花に情交を求めるなんざ、おかしいってことくらい。
記憶なんて戻ろうが戻るまいがどちらでもいい。
そりゃあ戻ってくれたら嬉しいしありがたいが、そんなことよりも今のほの花をどうやって落とすかと言うことの方が俺の中では遥かに重要だ。
今のところ過去より今。未来より今だ。
"今"が手に入ったらそれから未来だ。
望みすぎは良くない。
今はほの花に自分のことを好きになってもらうことを重点的に考えたい。
そうでなければいつまで経っても苦行の禁欲状態が続く。
いくら夜な夜な抜いたといっても解消されるのは肉体的なつらさだけ。
精神的に解放されるのはほの花と想いが通じ合った後のことだろう。
「あーー…早く抱きてぇーーー…一日中まぐわいてぇ……」
「そ、それは…今のほの花様では体力がもたないのでは…?」
「…………じゃあせめて十回くらい…」
「いや…あの……相当限界なんですね…?」
俺の性欲問題が切実だと分かると三人がそばに寄って来てくれてひたすら慰めてくれる。
いくら優しい言葉をかけられても解消することはないのだが、それでもこの家でこんな相談ができるのはコイツらだけなのだから有難い限りなのだ。