第39章 陽だまりの先へ(終)※
俺の耳の良さはこう言う時も役に立つ。
部屋の準備をしながらでも聴こえてしまった話に最初は「おいおい…」と思ったが、瑠璃は瑠璃なりに考えがあるのだろうし、そのままにすることにした。
俺とのことまでほの花に話すとは思わなかったけど、いずれはバレることなのだ。
遅かれ早かれほの花には言うつもりだったし、俺はほの花を愛してるわけだからできれば添い遂げたいと思っている。
"今"は無理強いするつもりはないが、遠慮するつもりもない。
だからほの花の心にある遠慮も全部俺が斬り刻んでやる。
「だからさ、俺のこと…少しずつでもいいからよ。男として見てくんねぇかな。」
ほの花は俺との未来を諦める選択をした。
でも、俺はお前との未来を諦める選択なんてしたくない。
何度だってほの花と愛し合いたいと思っている。
隣で無くなってしまった湯呑みを持って動揺しているほの花の心臓は煩いけど、顔が困惑していると言うことは俺のことを"好き"と言う感情でのそれではない。
出会って一週間で恋に落ちろなんて確かに無理があるだろう。
それは分かっているから責めたりしないし、仕方ないことだ。
「…あの三人のことも聞いたんだろ?元嫁だって。」
「……えと、…はい。」
「俺が我慢できなくてお前を自分のものにしたんだ。アイツらに関係を解消しようと言ったのも俺が勝手にやった。」
ほの花はその時、最終選別に行っていたのでそんなことは知り得なかったこと。
告白を受けてくれたと言うことはこの時点で俺のことを好いていてくれたと言うことだとは思うが、寝耳に水だったのは間違いない。
「お前がアイツらに遠慮しちまう気持ちなんて考えもしないで、ただ自分の気持ちを押し付けてそれを受け入れてくれたほの花に甘えちまった。」
「え、そ、そんなこと…」
「いや、本当にそうなんだよ。ほの花のことをさ、誰にも渡したくなくて焦ってたんだ。お前、可愛いしよ。男なんて選り取り見取りだろうからな。情けねぇ限りだぜ…」
こちらを見て小刻みに首を振って否定してくれるほの花だけど、記憶がないのでそれ以上の言葉は紡げずにいる。