第39章 陽だまりの先へ(終)※
俺はとりあえず瑠璃に「落ち着け」と言って座布団に座らせるとことの次第を一から話すことにした。
ほの花と俺は鬼殺隊という組織に入っていて、鬼を倒すために活動していたこと。
ほの花は陰陽師の末裔で治癒能力があること。
今回俺の腕を治した反動で生死を彷徨っていたが、やっと目が覚めて今日退院だったこと。
そのかわり一時的にだとは思うが記憶が飛んでいること。
そして、俺たちの記憶もその戦いの時に一気に甦ったことも。
全て話し終えると瑠璃は天井を見上げてハァッとため息を吐いた。
「年単位で体調が安定しないらしいから暫くはこんな感じで家に帰ってきても休み休みって感じだろうな。さっき帰ってきて、疲れた顔してたから寝かせてやったんだわ。」
「なるほどねー…」
瑠璃はそのまま暫く押し黙ってしまい、俺も何を話したらいいのか分からずそのまま無言の状態が続いている。
話をしようにも何を言えばいいのか分からない。
瑠璃の返答次第だからだ。
「…ほの花はね、あんたの記憶を消した後、私に泣きながら言ったの。『本当はお嫁さんになりたかった』って。」
「…そうか。」
「もちろん可愛い可愛いほの花の頼みだもの。叶えてあげるんでしょうね?」
「え、あー、そりゃ…今も、そう望んでくれたら、な。」
そうやって思ってくれていたことはもちろん嬉しい。だから叶えてやりたいのは山々だが…如何んせんまだその段階にない。
またほの花を恋人にしたいし、そうするつもりだけど、その願いはさらに先のこと。
そんな先のことを今肯定してやれるほど関係性は不透明で心許ない。
「ほの花は、きっと責任をとってるのよ。」
「責任…?」
「あんた達の記憶を消した責任。最後までやりきったら必ず本当のことを打ち明けると言っていたの。でも、計らずしもあんた達の記憶は戻り、打ち明ける手間は無くなった。そのかわり今度はほの花が記憶を失った。」
瑠璃の顔はとても穏やかで笑みさえ浮かんでいる。
ほの花と出会って瑠璃もまた少し変わった。
前のような刺々しさは無くなり、丸くなった気がする。
ほの花が瑠璃と出会って心の支えを見つけたように瑠璃もまたほの花と出会ったことの副産物を得たのだろう。