第38章 何度生まれ変わっても
まだ婚姻関係を結んではいないようだが、いずれはそうなるだろう。
寂しくはなるが…そうなった時、この家を出ていくならば盛大に嫁入り道具を揃えてやらねば…と無駄に父親の心境になっていた俺だったが、須磨がニコニコしながらとんでもないことを言い出した。
「でも、やーっと言えてスッキリしましたねぇ!いずれは四組の夫婦で助け合って生きていきましょうねぇ!!子どもが産まれても助け合えますぅ!!」
「……は?ちょ、ちょっと待て…お前ら出て行かねぇの?」
「え?!お、お、追い出すつもりだったんですかぁ?!天元様酷いぃ!!!」
「ち、ちげぇって…!元旦那がいる家…なんて居心地悪くねぇの…?」
気にするのは正宗達。
流石に俺とコイツらの関係性を知っているのに共に暮らすと言うのは酷な気がした。
正宗達のことを気に入ってるからこそ、此処にとどまることで嫌な想いをするのではないかと思った。俺なりの配慮だった。
でも、そこまで考えてハッとした。
ほの花は…?
俺が秒で正宗達のことを気にしたようにほの花はずっとアイツらのことを気にしていたのではないか?
口では何も言ってこないほの花。"気にすんな"と言えば"分かった"と言ってくれてはいた。
果たして本当に分かっていたのだろうか?
思い出すのはずっと…ずっと…コイツらに遠慮ばかりしていたほの花の姿。
いつだってコイツらを立てて、控えめにしていたほの花。
風呂だってコイツらより最初に入ったことはないし、歩くにしてもコイツらの後ろをついて行く。
話だって割って入ったことなど一度もないし、思い返せば思い返すほどほの花はこの家で心から安らげたことはあったのだろうか?と思うことばかり。
守ってやるなんて口ばかり。
俺はほの花の居場所をちゃんと配慮してやったことはあっただろうか?
鬼殺隊のために婚姻関係を結ばなかったことにお互い同意していたし、それはそれで良かったと思う。
でも、この家で俺が居ない時、ほの花はどれほど遠慮して過ごして居たことだろう。
自分が居なければ…
元に戻せば…
そう考えてしまうような環境にしていたのは他でもない俺だ。