第38章 何度生まれ変わっても
だけど、現実はそう甘くは無いと思い知らされる。
ほの花の病室に入るとその光景に目を見開く羽目になったのだ。
「ハァッ、ッ、ハ、ッ、ハァ…ッッ…ッッ、ハッ…」
静かに寝台に横になって寝ているほの花を想像していたのに、其処にいたのは体を丸めて呼吸もままならない状態のほの花の姿だった。
「ほの花さん…!」
慌てた胡蝶がほの花に駆け寄ったことで、やはりただごとではない状態だと言うことが理解できる。
息をしたくてもできないのか、苦しそうな呻き声を聞いてしまうと、自分が蘇生させたのは間違っていたのでは無いかと思ってしまうほど。
「ほの花さん…、苦しいですね…頑張って…!頑張ってください…!」
蹲るようなほの花の背中をさすりながら必死に声をかける胡蝶を見て、居ても立っても居られずに体を引きずってその横まで歩み寄った。
「…胡蝶、俺が代わるわ。」
「宇髄さん…。」
「治療は…やれること、ねぇんだろ?」
先ほど言っていたことが事実ならばほの花は手の施しようがないということ。
薬が効かないならば自然に治るのを待つと言うことだ。
「…ない、ですが…、熱さえ下がれば…、助かると思うんです…。あと…、左を…心臓をなるべく上にして横向きになっていた方が呼吸が楽かもしれません。」
憔悴しながらもしっかりとした医療の知識も教えてくれるので俺は大きく頷き、胡蝶の位置と交代した。
肩で息をしながら、寝台で苦しそうに蹲っているほの花の体をゆっくりと開き、左側を上にしてやり背中をゆっくりと撫でた。
もちろんこんなことくらいで息苦しさが改善するなんてことはないだろう。
それでも体調が悪い時、人恋しくなるのはよくあることだ。
意識はなくとも、人がそばにいる感覚を感じて欲しかった。
俺がそばにいると分かって欲しかった。
お前は一人じゃ無いから。
胡蝶はひょっとしたら助かる見込みはほとんど無いと思っているのかもしれない。早々に立ち去り、二人きりにしてくれたところを見ると、最期の時を二人で過ごせと言われているみたいに感じた。
それでも…
俺はほの花のそばを離れなかった。
背中を撫で続けた。
出会った時と同じように。