第38章 何度生まれ変わっても
それでも、必死に助かる方法を模索するしかない。
医療の知識など無いが、何とか無い知恵を絞り出して胡蝶に問うてみる。
「…点滴から解熱剤は入れられねぇの?」
「薬はほぼ試しましたが全て駄目でした。ほの花さん自身が解熱剤が効かないことをうっすら気づいていらっしゃったので、恐らく事実でしょう。」
ほの花はそれを知っても尚、その力を使い続けていたということ。
お館様の病状が芳しくないのはほの花の発言から明白だった。
俺に嘘をついてまで使ったのは使わざるを得なかったと言うことだろう。
それに協力していたのが胡蝶と言うわけか。
確かに"使う"と決めたのならば、これ以上の協力者はいない。
俺が知っていたとしても大したことはできないし、進言もできない。
だとしても…知っていたかった。
知っていれば救護活動なんて頼まなかった。
アイツのことだ。俺から頼まれたからと言って少なからず力を使っていたかもしれない。
(……そういえば……)
頭に思い浮かぶのはあの鬼との戦闘の際のほの花の行動だ。
一度背後にほの花を庇った時。
心臓を自ら止めて目が覚めた時。
どちらも体が軽くなっていた。
怪我が治ったと言うより体力が回復していたといったと言うのが正しい。
あの時は何でだか考える余裕もなかった。
でも、今、確信している。
アイツは…あの戦いの時、俺を……助けてくれていたんだ。
何も言わずに。
上弦の鬼を倒すために。
「…でもよ、下がるんだよな?ずっと出続けるというわけじゃねぇんだろ?」
「勿論です。ただ問題はほの花さんがそれに耐え得るだけの生命力が残っているかということです。」
「どうすりゃあいい?何でもするからよ、頼む…!助けてやってくれ…!」
懇願するように胡蝶の肩を掴むが、目線は合わない。
まるで"諦めてくれ"と言われているように感じた。
「…どうすることもできないんです。我々は…ほの花さんを見守ることしかできません。」
「それで助かるのか?!まさか死にゆく様を見てろってことか?!そんなの絶対ぇにゆるさねぇ!!」
「私だって…‼︎どうにかしたいのは山々です…!!」
胡蝶の声も震えている。
当たり前だ。誰しもがこんな事実を目の当たりにしたら絶望するしかないのだ。