第37章 貴方は陽だまり
ほの花は薬箱を担いで手当たり次第に手当てを行なっていく。
ただでさえ医療班は少なくなっているというのが鬼殺隊の問題でもあり、此処での戦いのことは既に報告はいっているかもしれないが、到着するまでにはまだ時間を要するだろう。
…となれば、今此処にいる医療班はほの花一人だ。
できる限りの人を死なせたく無い。
こんなことはしたくないが、命の選択をせざるを得ない。
既に心停止している者より息のある者
軽傷の者は後回しにして重傷の者の処置
そして戦いに身を置く隊士達が怪我をしたならば…宇髄や炭治郎達の怪我の手当てを最優先にしなければならない。
命の選択など本来してはいけない。
通常の医療であれば考えられない。
だが、此処は戦場。
野戦病院であれば、そうせざるを得ないと聞いたことがある。
ほの花とて本来ならばそんなことはしたくはないが致し方ないのだ。
宇髄の妻であるまきをや須磨。
ほの花の元護衛である隆元や大進は怪我人を背負って花街の人を誘導してくれている。
ほの花がすべきことはとりあえず重傷の人の手当てをその場ですることだ。
「大進!!」
近くにいた元護衛である大進に声をかけるとほの花は持てそうなだけの傷薬と止血剤を渡す。
「これを持って避難した軽傷の人の手当てをお願い。私はもう少し奥に行って動けない重傷の人を助けてくる。」
「ほの花様、承知しました。お気をつけて…!」
お互い頷き合い、逆方向へと歩いていく。
これが最期ではない。
また会える。
ほの花は戦闘が繰り広げられている爆発音を頼りに見つからないように怪我人を探した。
自分が見つかれば迷惑がかかる。
またさっきみたいに宇髄が助けようとするかもしれない。
それでこそ本末転倒。
ほの花は足手纏いになりたくなくて、忘れ薬を飲ませたのだ。
「…だ…だ、れか…いない、か…?」
静かに歩いていた中でもあまりにか細くて聞き間違えたのではないか?と思うほどの小ささ。
耳を澄ませてもう一度声のした方に視線を向けた。